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麻痺の検査とその評価

障害程度の診断では、40点法(柳原法)を中心に、House-Brackmann法、Sunnybrook法など、顔面運動の評価法によっておこなわれますが、麻痺の重症度と予後は必ずしも一致しないことがあり、完全麻痺の状態のなかにも予後良好の患者さんもいますので予後診断が必要となります。
現在、世界的に用いられている評価法として、顔面各部位の動きを評価し、その合計で麻痺程度を評価する部位別評価法の40点法(柳原法)と、顔面全体を概括的にとらえて評価する方法のHouse-Brackmann法があります。
もともと、40点法(柳原法)はBell麻痺(ベル麻痺)とHunt症候群(ハント症候群)の麻痺を評価するために作成された評価法で、House-Brackmann法は、聴神経腫瘍手術後の麻痺を評価するために考案された評価法です。これら以外の評価法として、後遺症の評価に重点をおいたのがSunnybrook法です。


■40点法(柳原法)
40点法(柳原法)とは、顔面神経麻痺の症状が現れるBell麻痺(ベル麻痺)とHunt症候群(ハント症候群)の麻痺を評価する目的で作成された評価法で、、顔面各部位の動きを評価し、その合計で麻痺程度を評価する方法です。

評価は、安静時の左右対称性と、9項目の表情運動を4点(ほぼ正常)、2点(部分麻痺)、0点(高度麻痺)の3段階で評価し、40点満点で10点以上を不全麻痺、8点以下を完全麻痺と定義しています。 あるいは、20点以上を軽症、18〜10点を中等度、8点以下を重症としています。

表情運動とは、額のしわ寄せ、軽い閉眼、強い閉眼、片目つぶり、鼻翼を動かす、頬を膨らます、イーと歯を見せる、口笛、口をへの字にまげる の動作のことです。

  ほぼ
正常
部分
麻痺
高度
麻痺
ほぼ
正常
部分
麻痺
高度
麻痺
ほぼ
正常
部分
麻痺
高度
麻痺
安静時
非対称
片目
つぶり
イーと
歯を見せる
額の
しわ寄せ
鼻翼を
動かす
口 笛
軽く目を
閉じる
頬を
膨らます
口をへの
字にまげる
強く目を
閉じる
合計       点 
4点:左右差がない、またはほとんどない(ほぼ正常)
2点:明らかに左右差があるが、患側の筋収縮がみられる(部分麻痺)
0点:筋収縮が全くみられない(高度麻痺)
共同運動
拘  縮
顔面痙攣
ワニの涙 
(0, 1, 2, 3)
(0, 1, 2, 3)
(0, 1, 2, 3)
(0, 1, 2, 3)
発症年月日: 検査日:
表:40点法(柳原法)

■誘発筋電図(ENoG)

顔面神経麻痺において、神経変性の程度を把握する検査では、検査法の簡便性、検査時間の長さ、予後早期診断法としての正確性から表面電極による記録を用いた誘発筋電図(ENoG)が,最も正確な検査法として用いられています。
しかし、神経変性は障害部位から末梢に進むために、発症早期には神経変性を正確に診断することはできません。
Bell麻痺(ベル麻痺)とHunt症候群(ハント症候群)の場合、障害部位は膝神経節であるが、電気刺激が可能な茎乳突孔より末梢において神経変性が完成するには7日〜10日を要するので、この期間には正確な予後診断はできず、それ以降の時期に検査が必要となります。

以上の検査法を利用して、顔面神経麻痺の病態を把握する基準は以下の通りです。

(神経変性には軸索断裂と神経断裂の2種類があります。そして、神経断裂は神経線維内膜まで断裂しているために、再生時に従来の表情筋の経路と異なった無秩序の迷入再生が起こり、後遺症の1つである病的共同運動が生じます。 ENoGの結果と、後遺症の原因となる神経断裂繊維数はほぼ一致しています。)


ENoG値 ≧ 40% {または40点法(柳原法)で発症2週間で20/40 点以上}
は軽症、発症1週間は著名な回復は起こらないが、4〜6週間で治癒し後遺症は残らない


40% > ENoG値 > 10% {または40点法(柳原法)で発症8週間で18〜10/40 点}
は中等度、軸索断裂再生繊維 1日1mmのスピードで再生し、表情筋に達する3ヶ月ほどで麻痺はある程度回復する。しかし、神経断裂繊維が表情筋に到達しはじめる4ヶ月以降に少し後遺症が出現する。


ENoG値 < 10% {または40点法(柳原法)で発症8週間で8/40 点以下}
は重症例、再生繊維が表情筋に到達する3〜4ヶ月以降に回復が始まると同時に病的共同運動や顔面拘縮など、機能異常あるいは後遺症も出現してしまう。


■後遺症の予防、または後遺症軽減の臨界期
Bell麻痺(ベル麻痺)やHunt症候群(ハント症候群)では、膝神経節病変の変性部位変性が起こるのとほぼ同時に神経再生も起こり始めます。
ENoG値 < 40% では、神経断裂繊維を含んでいることから迷入再生が起こります。再生繊維が表情筋に到達し始めるのは3〜4ヶ月ですが、すでにこの間に迷入再生は進行しています。この時、神経再生を促進させていいのは脱髄と軸索断裂繊維です。神経断裂繊維の再生を促進することは4ヶ月後に後遺症である病的共同運動と拘縮を形成することになるため、少なくとも発症から3ヶ月間は表情筋の協力で粗大な収縮(強力な随意運動や神経筋電気刺激)を避ける必要があります。

鍼灸院における鍼灸治療においても同様のことが言えますので、患者さんには、麻痺しているからといって、動くようになるよう無理にご自身で筋肉を動かすことを控えるよう指導していますし、神経筋電気刺激に相当する顔面部に対する低周波治療や鍼通電治療は行いません。

しかし、これら以外の鍼灸治療は、自分で正しい方向に治療するための力(自然治癒力)を促進することができ、顔面神経麻痺の障害部位を選択して治療することができるため、回復の可能性は高まります。 また、上記にご紹介した検査方法の評価では、細かな部分の状態が把握できません。麻痺から回復している患者さんほど、「ここのこの動きが」など、細かな動きの支障が気になってしまいます。鍼灸治療では、このような細かな部分的麻痺に対しても対応することができます。


顔面神経麻痺 顔面神経麻痺2 顔面神経麻痺3

顔面神経麻痺4 顔面神経麻痺5 顔面神経麻痺6

顔面神経麻痺7 顔面神経麻痺8 顔面神経麻痺9

顔面神経麻痺10 顔面神経麻痺11 顔面神経麻痺12

顔面神経麻痺13 顔面神経麻痺14 顔面神経麻痺15

顔面神経麻痺16 顔面神経麻痺17