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専門外来のご案内 : 起立性調節障害
不登校とは
そもそも不登校とは何でしょう?
文部科学省では
不登校とは何らかの心情的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状態にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由によるものを除いたもの
引用元: 不登校の現状に対する認識:文部科学省
とされています。
そして、同じことのように捉える方もいますが、不登校とひきこもりは違います。
ひきこもりは
「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態」
引用元: 政策レポート:厚生労働省
とされていて、単一の疾患や障害の概念ではなく、様々な要因が背景になって生じると考えられています。管轄が文部科学省と厚生労働省で別れているのも気になりますよね。
不登校の現状
不登校となった子供は、平成29年度では文部科学省の調査によると
小学生 35,032人
中学生 108,999人
高校生 49,643人
という結果となりました。思春期に突入する中学生の不登校が特段多いのがわかります。
思春期は、ホルモンの変化、自律神経の変化が激しいときです。
最新の状況は、文部科学省:平成30年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果についてを御覧ください。
不登校の原因
不登校の原因は大きな要因で分けると
- 学校生活に起因
- 家庭生活に起因
- 病気など本人に起因 35.0%
- その他
の4種類となります。
このうち、当院での治療が可能なのは、病気など本人に起因する不登校となります。
不登校の原因となる病気の種類
では、不登校の原因となる病気にはどのような種類があるのでしょう。
それは主に以下のとおりです。
- 発達障害(ADHD,ASD,LD)
- うつ病などの神経症
- 起立性調節障害
発達障害(ADHD,ASD,LD)
ADHD:注意欠如・多動症
ADHDとは、年齢あるいは発達に不相応に、不注意、落ちつきのなさ、衝動性などの問題が、生活や学業に悪影響を及ぼしており、その状態が6ヶ月以上持続していることと定義されています。
脳機能の発達や成熟に偏りが生じた結果と考えられていますが、その原因はまだよくわかっていません。遺伝的な素因や周産期の問題、環境要因などが複雑に関連して症状が現れるといわれています。
約5%のこどもがADHDと診断されています。男児は女児より3から5倍多いことも知られています。
ASD:自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群
ASDは、社会的なコミュニケーションや他の人とのやりとりが上手く出来ない、興味や活動が偏るといった特徴を持っていて、自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群といった呼び方をされます。
問診や心理検査などを通して診断されます。親の育て方が原因ではなく、感情や認知といった部分に関与する脳の異常だと考えられています。
まず、周囲の方々のASDの特性への理解が必要です。
LD:学習障害
LDは、読み書き能力や計算力など算数機能に関する特異的な発達障害のひとつです。的確な診断・検査が必要で、ひとりひとりの能力に応じた対応策が求められます。
ADHD・高機能自閉症などを伴う場合には、それらを考慮した学習支援も必要で、家庭・学校・医療関係者の連携が欠かせません。
起立性調節障害:OD
起立性調節障害とは
起立性調節障害は、自律神経系の異常で循環器系の調節がうまくいかなくなる疾患です。
主に小学生中学年から中学生の思春期前後の小児に多く見られ、起立時にめまい、動悸、失神などが起きる自律神経の機能失調です。
はじめは、午前中は調子が悪く、脳に十分血液が通わないため、授業や仕事に集中出来ないことが多いですが、夕方には回復するため、「怠け病」と扱われて辛い思いをすることもあります。
また、朝起きれない、頭が痛い、学校に行きたくないなど「いじめかな?」ともとられるような不登校の症状ですが、本人の意志とは無関係にあらわれる症状です。れっきとした病気なので治療が必要となります。
起立性調節障害の多くは、自律神経に関係する末梢血管交感神経活動が低下してしまう病気です。
起立性調節障害チェック表
次のような症状は、起立性調節障害かもしれません。
診断は、次に掲げる「チェックリスト」うち3つ以上当てはまり、かつサブタイプのいずれかに合致することとなっています。 (起立性調節障害サポートグループ)
- 立ちくらみやめまい
- 起立時の気分不良や失神
- 入浴時や嫌なことで気分不良
- 動悸や息切れ
- 朝なかなか起きられず午前中調子が悪い
- 顔色が青白い
- 食欲不振
- 腹痛
- 倦怠感
- 頭痛
- 乗り物酔い
起立性調節障害のサブタイプ
①起立直後性低血圧
第1に多いタイプは、起立直後性低血圧です。
英語ではinstantaneous orthostatic hypotension、INOH、アイノーと言います。
アイノーは、起立直後に一過性の強い血圧低下があり、同時につよい立ちくらみと全身倦怠感を訴えます。血圧回復時間が25秒以上であれば、アイノーと診断できます。
アイノーには、軽症型と重症型がありますが、起立時の血圧低下が強く、収縮期血圧が
15%以上低下したままであれば、重症型と診断します。
アイノーの起立時のノルアドレナリン分泌は低下しており、重症型ではその障害が顕著です。
小児では代償的な頻脈を認めます。
②体位性頻脈症候群
2番目に多いタイプは、体位性頻脈症候群です。
英語でpostural tachycardia syndrome、略してPOTS、ポッツと言います。
ポッツは起立時の血圧低下はなく、起立時頻脈とふらつき、倦怠感、頭痛などの症状があります。
起立時の心拍数が115以上、または起立中の平均心拍増加が35以上あれば、ポッツと診断します。起立中に腹部や下肢への血液貯留に対して、過剰な交感神経興奮やアドレナリンの過剰分泌によって生ずると考えられています。
③血管迷走性失神
3番目は、血管迷走性失神です。
英語でneurally-mediated syncope、略してNMSといいます。
起立中に突然に収縮期、拡張期血圧が低下し、症状が出現します。
発作時に徐脈を起こす場合もあります。
通常は、起立中に過剰に頻脈が起こり、そのため心臓が空打ち状態となり、その刺激で反射的に生ずると考えられています。
したがって、アイノーやポッツでもNMSが起こります。
失神発作を主訴とする患者の検査陽性率は、欧米では20~64%と報告されており、珍しい疾患ではありません。
④遷延性起立性低血圧
4番目は、遷延性起立性低血圧です。
起立直後の血圧反応は正常ですが、起立数分以後に血圧が徐々に下降し、収縮期血圧が15%以上、または20mmHg以上低下します。
頻度は余り多くありません。
静脈系の収縮不全と考えられ、拡張期圧は上昇し脈圧の狭小化を招きます。
日本小児心身医学会編 小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン(改訂版)では、以下の新しいサブタイプが記載されていますので、紹介します。
⑤起立性脳循環不全型
5番目は、脳血流低下型(起立性脳循環不全型)です。
これは、起立中の血圧心拍変動は正常内ですが、起立中に脳血流が低下して、それに伴う様々なOD症状が出現します。診断には、脳循環を測定できる特殊な装置(たとえば近赤外線分光計(near-infraned spectrocopy;NIRS)を必要とするため、一部の医療機関でしか診断できません。診断基準も国際学術誌に発表されています。
⑥高反応型
6番目は、高反応型です。
これは、起立直後に一過性の著しい血圧上昇を起こし、それに伴う様々なOD症状が出現します。診断には、一心拍ごとに血圧を測定できる特殊な装置(たとえば非侵襲的連続血圧測定装置(Finometerなど)を必要とするため、一部の医療機関でしか診断できません。診断基準も設定されています。
これに加えて、
⑦起立性高血圧型 も報告されています。
これは、起立後に臥位よりもかなり高い血圧になるタイプです。やはりOD症状が出現します。
起立性調節障害の治療
日本小児心身医学会では起立性調節障害に対して<起立性調節障害(OD)に対する整骨や整体などの代替療法の効果についての声明>を発表しています。
しかし、当院の治療法としては、これに該当しない小児、自律神経系専門の鍼灸治療となります。
東京大学医学博士になられ元筑波技術短期大学学長等をされていた西條一止先生の著書や講義では、鍼灸治療が人体に及ぼす自律神経機能の変化を科学的根拠に基づき紹介しています。
このメカニズムを利用することにより、副交感神経が優位になり誘発する喘息発作を改善することも可能ですし、末梢血管交感神経活動が低下してしまう起立性調節障害にも応用することができます。また、現在の体質を東洋医学的診断、治療からもアプローチすることで起立性調節障害の症状改善、再発防止につながります。
ただ、注意すべき点は、以上のようなメカニズムを正しく理解し治療に反映しなければ効果が出ません。
当院では、西條一止先生が学長を務めていた「東洋医学臨床技術大学校アカデミー」にも全8期(8年)参加しており自律神経治療の西條イズムを継承しています。
参考文献:
鍼灸臨床最新科学 メカニズムとエビデンス(医歯薬出版株式会社)
臨床鍼灸治療学(医歯薬出版株式会社)
臨床鍼灸学を拓く第2版 科学化への道標(医歯薬出版株式会社)
01 問診
当院では、まず患者さんから立ちくらみやめまい、失神、頭痛、動悸など気になる症状、悪化する状況をうかがって、体の状態を把握します。
その後、治療内容と今後の方針を極力わかりやすく説明させていただき、患者さんにご納得いただいてから治療に入ります。
起立性調節障害は、単に自律神経の病気ではなく、他にもいくつかの原因が関係しています。
その原因を明らかにするため、当院では様々な質問をおこないます。
男子では、早産ではなかったのか、学校環境、生活習慣、声変わりや反抗期などを考慮、女子では、加えて初潮を迎えているのか、月経周期は安定しているのか、夜尿症などあるのか、低血圧や貧血はもともとあるのかなど疑わしい項目を「問診」させていただきます。原因不明の発熱から、起立性調節障害が始まることもあるから注意が必要です。
02 検査
問診後は、実際にからだがどのような状態なのか、確認するための検査をします。
検査項目は、西洋医学的な検査に加え、東洋医学的な診断もおこないますので、脈をみたり、お腹の状態を確認したりすることもあります。脈を診ることで、自律神経の変化や生理周期の変化も読み取ることができるため確認します。
自律神経に関して詳しい情報は自律神経失調症を御覧ください。
03 鍼灸治療
問診と検査等の後は、ベッドに横になってリラックスしていただいた状態で治療を開始します。状態が安定しているときは座位でおこなうこともあります。
(上の写真は、わかりやすくするため座っています。)
体の状態が冷えているのか、硬く緊張しているのか、患者さんの主な訴えと関連する部分はあるのかなど把握したうえでその日の体の状態に合わせたツボに鍼灸治療をおこないます。
鍼治療は、小児の場合、皮膚を軽くつつくような小児鍼を使用します。大人用の鍼は髪の毛と同じくらいの太さ0.1mmほど、お灸は、火が直接肌に触れないものを使用していますので、火傷やお灸の痕が残る心配を極力減らします。
お灸にはリラックス効果だけでなく、血行の促進や抵抗力を高めて体を強くしてくれるといった様々な作用があります。また、鍼治療の後にお灸をすることで、自律神経の活性化の維持する作用もあります。
04 電気光線療法
患者さんの症状によっては、鍼や灸に加えて、より血行を促すため、運動不足を解消するために電気治療を併用する場合があります。電気治療というと「ビリビリ」という痛いイメージが先行しがちですが、実際には眠ってしまうような心地の良いごく微弱な電流を流す程度です。
電気治療は、鍼灸治療同様に、刺激部位、方法や体位によって自律神経の正常な働きを学習することができます。
起立性調節障害のツボ
身柱(しんちゅう)
身柱は、「身の柱」と書くくらい体にとって重要なツボです。もともと、夜泣き、かんしゃく、ひきつけなど自律神経系の治療によく使うつぼで、左右の肩甲骨の間、脊髄にあります。そのため、真鍮の刺激で脊髄反射が活性化し、起立性低血圧のような症状の改善につながります。
百会(ひゃくえ)
百会は、頭のてっぺんにあるツボで、全身にある経絡が交わるところで、全ての臓器と繋がっているとされています。
そのため、全身的に自律神経のバランスを整え、活性化してくれます。脳貧血性の頭痛、ストレス性の歯ぎしり、睡眠障害に対しても対応することができます。
ストレスが蓄積した時、不眠、不安が強い時、症状が長期間続いている時にも効果があり、よく使用するツボです。また、女性が起こしやすい脳貧血による頭痛などに効果的で、気分がゆううつな時にもよく使用します。
足三里(あしさんり)
足三里(あしさんり)は、奥の細道で松尾芭蕉が使用したとこでも知られているツボです。
足の陽明胃経に属するツボで、生命活動の源、後天の精を養う脾胃の機能を活性化させてくれる効果があります。一般的に胃腸疾患全般に使用しています。胃腸は自律神経に属する第10脳神経の迷走神経が支配しています。生命力を活性化させることと同時に、自律神経が反応しやすい膝下の刺激をすることになるので、刺激方法によっては交感神経の興奮を促してくれます。
治療は三人四脚
起立性調節障害は一人では治せません。
お子さんと治療家だけでも治りません。
- ご家族が朝起きる手助けをしてあげる
- ご家族が治療のため送ってあげる
- ご家族が落ち込んだ心を癒やしてあげる
などご家族の手助けが必ず必要になってきます。
頑張る必要はありません。
無理せず、できることからやっていきましょう。