専門外来のご案内 : うつ病
うつ病でお悩みですか?
うつ病は、脳のエネルギーが欠乏した状態となる気分障害の一つです。うつ病にかかってしまうと、気分の落ち込みや意欲の喪失に加えて、思考力低下、気力の減退、食欲の異常、睡眠障害などの症状が重なってあらわれます。
一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった精神症状とともに、眠れない、食欲がない、疲れやすいなどの身体症状が現れ、日常生活に大きな支障が生じている場合、うつ病の可能性があります。
・・・厚労省:みんなのメンタルヘルス
うつ病でお悩みの方、最近、仕事などの意欲が落ち込んでいると感じている方は早めにご相談ください。1日でも早く、明るい生活を送れるように治療しましょう。
また、うつ病には鍼灸治療が効果的で、WHO(世界保健機関)のレポートでは、うつ病 抑うつ症が「臨床試験によって鍼が有効とされた」と記載され
うつ病の症状
典型的な「うつ病」では、次のような症状が見受けられます。ほぼ1日中抑うつ気分があったり、ほぼすべての活動に興味や喜びが極端になくしていたりする。集中力がなくなり、考えが進まない。食事療法などをしていないのに体重増加もしくは体重減少がみられる。そし不眠または過眠がほぼ毎日続く。自分に対して無価値観や過剰もしくは不適切な罪悪感をもつ。さらに、死もしくは自死についての反復思考、自殺企図、または自死を実行するための具体的計画にいたったりする。
※参考 : 精神疾患の診断・統計のマニュアル DSM-5
身体に現れるうつ病のサイン
- 食欲がない
- 性欲がない
- 眠れない、過度に寝てしまう
- 体がだるい、疲れやすい
- 頭痛や肩こり
- 動悸
- 胃の不快感、便秘や下痢
- めまい
- 口が乾く
周囲の人にもわかるうつ病のサイン
また、身近な人が「いつもと違う」以下のような変化が見受けられたら注意が必要です。
- 表情が暗い
- 自分を責めてばかりいる
- 涙もろくなった
- 反応が遅い
- 落ち着かない
- 飲酒量が増える
うつ病の原因
うつ病が起こる原因は、心理的なストレス、脳内の変化、なりやすい体質にあります。
うつ病は、これら3つの原因が重なって引き起こされます。
また、うつ病は心の病と思われがちですが、心理的なストレスによって脳の働きが崩れ感情に関係する神経伝達物質が不足することによって発症する脳の病気です。
感情をコントロールする神経伝達物質
ノルアドレナリンは、危険やストレスから身を守るために積極性や集中力を高める物質です。
ドーパミンは、快楽や興奮を覚え、やる気を起こさせる物質です。
セロトニンは、別名「幸せホルモン」とも呼ばれていて、自律神経のバランスを整えて精神を安定させる作用があります。
うつ病は、脳内の神経伝達物質「セロトニン」「ノルアドレナリン」が減ってしまう病気だと考えられています。これらの神経伝達物質は精神を安定させたり、やる気を起こさせたりするものなので、減少すると無気力で憂うつな状態になってしまいます。
うつ病の種類
うつ病は、真面目で責任感が強い人ほどかかりやすい病気といえます。そして、うつ病になってしまう人は、この性格が人よりも強く、仕事や人間関係に対してより多くのエネルギーを使ってしまいます。
代表的なうつ病としては「メランコリー型」、「産後」、「非定型」、「季節型」などがあります。
メランコリー型うつ病
「メランコリー型」は、典型的なうつ病です。
さまざまな仕事や責務、役割に過剰に適応しているうちに脳のエネルギーが枯渇してしまうような経過をたどるものを指しています。特徴としては、良いことがあっても一切気分が晴れない、明らかな食欲不振や体重減少、寝起きの気分の落ち込みがいちばん悪い、2時間以上前に目が覚める、過度な罪悪感、などがあります。
産後うつ病
産後うつ病とは、分娩後の数週間~数カ月後まで極端に悲しくなったり、泣き叫んだり、易怒性や気分の変動がみられる状態をいい、日常活動や子どもへの関心を失うこともあります。
産後うつ病は、出産によってホルモンバランスが乱れることと、育児に対する不安や環境の変化といったストレスの2つが原因と考えられています。
うつ病になったことがある場合、産後うつ病を発症しやすくなります。
※マタニティーブルーと呼ばれている症状は、産後3日以内にみられる悲しさや惨めさなどの感情で、多くの母親が経験するものです。こうした感情はたいてい2週間以内に治まるため、あまり心配することはありません。
非定型うつ病
「非定型うつ病」とは「新型うつ病」、「現代型うつ病」と言われているうつ病の総称です。20~30代の女性を中心に発症者数が増加しています。
非定型うつ病は、従来型のうつ病との違い、ストレスを感じるときは気分が落ち込む一方、ストレスを感じない、遊ぶ時には気分が良い、なんでも他人のせいにしがちな他責思考、過眠、過食、体の鉛のような重さという症状が挙げられます。
季節型うつ病
「季節型うつ病」というのは非定型うつ病の一つです。季節型感情障害(SAD)とも呼ばれ、主に特定の季節に発生し、食欲低下、不眠、不安感、精神的不調などのうつ症状を半年程度のサイクルで毎年繰り返す症状のことです。
また、季節型うつ病は、「夏季うつ病」「冬季うつ病」と呼んでいて、 女性は男性の3倍「夏季うつ」にかかりやすい傾向にあります。
夏季うつ病
夏季うつ病は、6月頃から発症し、9月には回復します。原因は日光の浴びすぎや、日頃から冷房をつけるのを我慢してしまうことと言われています。
症状としては、全身の倦怠感、やる気が出ない、無気力感など夏バテと似たような症状があらわれます。
冬季うつ病
冬季うつ病は、10月頃から発症し、3月には回復します。
症状としては従来のうつ病と違い、過食、過眠の症状があらわれます。原因は日照量不足といわれています。
うつ病に対する鍼灸治療の研究
双極性障害の慢性的なうつ症状に対し鍼治療が有効であった1症例 松浦 悠人ら
うつ病、双極性障害に対する鍼灸治療の効果に対しては、臨床的な研究データが増えてきています。研究一例では、治療対象として、うつ病、双極性障害の診断を受け、かつ二種類以上の薬剤により十分な治療で改善しなかった患者さんに対して、基本的な治療とその他身体症状に合わせた治療を週一回おこなうことで一定の改善が見られ、その効果は治療終了後二ヶ月は持続するとの報告でした。
この他にも、双極性障害に対する臨床研究の成果は全日本鍼灸学会をはじめ、さまざまな学会で報告されています。
また、NIH(米国 国立衛生研究所)の見解として鍼灸療法の各種の病気に対する効果とその科学的根拠、西洋医学の代替治療として効果について有効であると発表しました。
そして、WHO(世界保健機関)のレポート(2002)に「臨床試験によって鍼が有効とされた」と記載されている疾患・症状(鍼灸に非常に好意的なレポート)には、
Depression (including depressive neurosis and depression following stroke)
うつ病 抑うつ症(抑うつ神経症と脳卒中後の抑うつ症を含む)
と明記されました。
うつ病は、すぐに治る病気でもなく再発もしやすい病気です。そのため、気分がすぐれない時はもちろんのこと、「今日は調子がいいな」と感じる時でも、良い調子が長持ちするように、下がらないように治療し、自立できるようにしていかなければなりません。
長年、薬物療法やTMS治療、認知行動療法などおこなったが良くならないとお悩みの患者さんは鍼灸治療をおすすめします。お気軽にご相談ください。
当院著書:うつを鍼灸で治す
日本人の5人に1人は「うつ症状」を経験していると言われており、今はうつは日本人の国民病となっている。
一般にうつ病の治療には、抗うつ薬が使われるが、不適切な利用による副作用などによって悪化することもあるし、新型うつのように従来の抗うつ薬があまり効かないケースも出てきている。
そうしたうつ病に悩む多くの現代人にぜひ試してほしいのが、鍼灸によるうつ治療。鍼灸は肩こりや腰痛など身体の不調を治すものという印象が強いが、うつ病、気分障害、自律神経失調症、睡眠障害など、心の疾患にも効果がある。意外と知られていないが、鍼灸がうつの治療に効くことは、WHOでも認められていることなのだ。
また、薬のような強い副作用がないこともメリットと言える。・・・出版社より引用
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うつ病に対する鍼灸治療
うつ病の治療ポイントは、神経伝達物質セロトニンやノルアドレナリンの分泌量をどうコントロールするかです。
鍼灸治療では、セロトニンの分泌を促すと同時に神経伝達物質の分泌不足によって引き起こされる自律神経症状にアプローチします。
当院の鍼灸治療では、患者さんの全体的な病状、その日の病状時期によって治療方針を組み立てます。
大きな治療方針の枠組としては、中医学による全身症状の改善、現代生理学による自律神経機能の改善、脳科学の検知から脳機能の改善をおこないます。
東洋医学の考え方として、本治と標治というものがあります。本治とは、病気の根本的な原因をなおすこと、そして標治は、自覚している症状を治すものです。一般的に西洋医学の治療は、標治を主におくことが多いです。
しかし、東洋医学の考え方ではどちらの治療も必要と考えており、特に双極性障害のような症状が変動する病気に対してはどちらも必要になってきます。当院の治療方針では、東洋医学的な治療法だけでは足りない部分を、現代生理学と脳科学的な治療法から補うことで、より安定して確実に症状を改善することができます。
- 臓腑弁証・気血津液弁証
- 西條式自律神経プログラム
- 山元式新頭鍼療法(YNSA)
臓腑弁証・気血津液弁証
臓腑弁証・気血津液弁証とは、中医学の基礎となる診断方法です。特に慢性病に対しては、この2つの診断方法をあわせておこなうことが有効とされています。
気血津液弁証とは、人体を構成する陰液である血・津液・精と、陽気(気)の病理状態を判断するもので、五臓において気血津液などの正常なバランスが崩れた時に病気は起こると考えます。
臓腑弁証とは、診察で得た情報を分析、どの臓腑の変化が生じているのかを診断し、治療に結びつけるものです。
西條式自律神経プログラム
東京大学医学博士であり、筑波技術短期大学名誉教授、自然鍼灸学・自律神経臨床研究所 所長の西條一止先生は、自律神経機能からの鍼灸の科学化を構築したパイオニアです。
長年の研究科から、鍼が自律神経に影響を与え身体の治す力を引き出せる6つの治効メカニズムを発見ししました。このプログラムでは、姿勢と、呼吸、鍼治療の刺激方法によって自律神経機能をコントロールできることを科学的に証明し、臨床の現場で応用しています。
当院では、西條一止先生が学長を務めていた「東洋医学臨床技術大学校アカデミー」にも8年参加しており西條理論を忠実に再現しています。
山元式新頭鍼療法(YNSA)
山元式頭鍼療法は、医師である山元敏勝医師(医学博士)が治療法を確立しました。
山元式頭鍼療法は、脳出血、脳梗塞における半身不随、麻痺、言語障害、めまい、難病、パーキンソン症候群等に広く活用され、主にドイツ、アメリカ等欧米においては広く普及し、活用されています。今までの鍼治療とは全く異なり、即効性のある効果をあげています。
これから鍼灸治療を受ける方へ
うつ病は治療を始めればすぐに治療が終わるというものではありません。治癒していく過程にはある程度の期間が必要になります。治っていく経過も、良くなったり、悪くなったりという小さな波をもちながらゆっくりと1段ずつ上るように改善していきます。そして、うつ病の多くは、以前の元気が回復している状態=「寛解」状態を迎えることができるとされています。
治療の期間は、「急性期」、「回復期」、「再発予防期」と大きく3つの期間に分かれます。
うつ病を引き起こす原因はひとつではないので、3つの期間がそれぞれどれくらいの時間を要するかは、状況によって個人差があります。急性期が1か月~3か月、回復期が4か月~6か月、再発予防期が1年~、というのが典型的なうつ病の場合の大まかな目安となります。もちろん軽症で早期に治療を開始した場合には、より早く再発予防期に移行することが可能となります。生活習慣病と同様、早期に対応することが重要であることは変わりありません。
大切なことは、元気になってもすぐに治療は止めないということです。「回復期」の途中で寛解の状態を迎えます。その時自己判断で治療を中断してしまう方が珍しくありません。その結果、せっかく回復したのに再発してしまうことがあるのです。治療ペースは担当鍼灸師によく相談することが大切です。
体調が気になったらすぐに治療する、体調が良くても状態に合わせて定期的に治療することが再発予防につながります。
心療内科等の医療機関と併用で大丈夫です。うつ病でお悩みの時は、もしくは気分がすぐれないなと感じた時はお気軽にご相談ください。