症状別Q&A : 機能性ディスペプシア
「胃の痛み」や「胃もたれ」が気になります
最近、「胃の痛み」や「胃もたれ」が気になりますか?
薬局で胃薬を買って飲んでも良くならないし、病院でピロリ菌や内視鏡の検査までしても異常が見つからない。
そんな、症状をお持ちの方は「機能性ディスペプシア」という病気かもしれません。このページをお読みの方は、すでに機能性ディスペプシアと診断されてお困りの方もいると思います。
そんな、症状をお持ちの方は「機能性ディスペプシア」という病気かもしれません。このページをお読みの方は、すでに機能性ディスペプシアと診断されてお困りの方もいると思います。
もともと、ディスペプシアとは、胃の痛みやもたれなどの不快な腹部の症状を指す医学用語です。
機能性ディスペプシアとは
機能性ディスペプシアは、過敏性腸症候群とともに機能性消化管障害に属します。また、過敏性腸症候群が大腸の機能的な異常から発症するのに対し、機能性ディスペプシアは主に「胃」の機能的な異常により発症します。
この病気は、ローマⅣ診断基準に基づいて診断されますが、その中で症状によって食後愁訴症候群と心窩部痛症候群の2つに分類されます。
機能性ディスペプシアの診断基準
機能性ディスペプシアは食後愁訴症候群と心窩部痛症候群の2つに分類されます。
食後愁訴症候群は、食後のもたれ感や摂取開始後すぐに満腹感を覚える早期飽満感を主症状にするものです。一方、心窩部痛症候群は、心窩部(みぞおち)の痛みや灼熱感を主症状にします。
★機能性ディスペプシアの診断基準
下記の症状のいずれかが診断の少なくとも6か月以上前に始まり、かつ直近の3か月間に下記症状がある。
1.つらいと感じる心窩部痛
2.つらいと感じる心窩部灼熱感
3.つらいと感じる食後のもたれ感
4.つらいと感じる早期飽満感
及び症状を説明しうる器質的疾患はない。
★食後愁訴症候群の診断基準
★食後愁訴症候群の診断基準
少なくとも週に3日、次の1-2のいずれか1つか2つを満たす。
1.つらいと感じる食後のもたれ感
2.つらいと感じる早期飽満感
★心窩部痛症候群の診断基準
★心窩部痛症候群の診断基準
少なくとも週に1日、次の1-2のいずれか1つか2つを満たす。
1.つらいと感じる心窩部痛
2.つらいと感じる心窩部灼熱感
機能性ディスペプシアに対する鍼灸治療の有効性
機能性ディスペプシアは、胃腸の働きを支配している自律神経系の機能障害です。機能障害は、薬でどうにかなるものではなく、神経の働きを正常に戻してあげることが必要です。
鍼灸治療は、自律神経の働きを正常にすることを得意とする治療法で、機能性ディスペプシアの症状である胃もたれ、みぞおちの痛みなどを楽にすることができます。
機能性ディスペプシアに対しては、世界中で研究が進んでおり、以下にいくつか研究論文をご紹介します。
機能性ディスペプシアに対する鍼治療
単一盲検、ランダム化、対照試験
【対象】
56人(男性:21人、女性:35人)の機能性ディスペプシア患者
RomeⅢ診断基準の食後愁訴症候群の基準を満たした者
鍼治療グループ(28人);平均年齢49.29 ± 10.32歳
【方法】
鍼治療を3〜4回/週で1ヵ月間行った。
足三里、太渓、 足臨泣、内関、神門に鍼を25mm刺入し、20〜60分の置鍼
【結果】
食後の膨満感、早期飽満感、上腹部痛、うつ症状、QOLが改善した。
上腹部の焼ける感じ、不安症状は鍼治療グループのみで改善がみられた。
鍼治療によって症状の改善が治療後も3ヵ月持続した。
機能性ディスペプシア患者の血漿ガストリン濃度は、健康成人より低かったが、鍼治療によって健康成人レベルまで改善した。
機能性ディスペプシア患者の脳活動に対する鍼治療の影響と効果
【対象】
64人(男性:25人、女性:39人)の機能性ディスペプシア(食後愁訴症候群)患者
RomeⅢ診断基準の食後愁訴症候群の基準を満たした者
鍼治療グループ(34人):平均年齢23.97歳
【方法】
鍼治療を4週間で20回(5回/週)
梁丘、足三里、豊隆、衝陽に鍼を15〜25mm刺入し、鍼通電(2/100Hz)を行った。
【結果】
鍼治療によって、食後の膨満感と早期飽満感、QOLが改善した。
機能性ディスペプシア患者の脳幹・視床の糖代謝が、健常人より高かったことが示されている。
鍼治療グループにおいて、NDIスコアの増加と関連して、脳幹と視床の糖代謝の減少がみられた。
→QOLの改善には脳幹と視床の不活化が関係していると考えられる。
鍼治療は、島皮質、視床、脳幹、前帯状皮質、視床下部の糖代謝を減少させ、ディスペプシア症状の軽減、QOLを改善した。
機能性ディスペプシアに対する鍼通電治療と血漿グレリン・CGRP・GLP-1への影響
【対象】
64人(男性:26人、女性:38人)の機能性ディスペプシア患者
RomeⅢ診断基準を満たした者
鍼治療群(32人):平均年齢42.6 ± 11.9歳
薬物療法群(32人):平均年齢41.8 ± 12.2歳
【方法】
・鍼治療グループ
鍼治療を1回/日で30日間、連続で行った。
足三里、三陰交、公孫、内関への30分間の置鍼
・薬物療法グループ
モサプリドクエン酸塩(5mg)を1日3回。30日間
【結果】
鍼治療、薬物療法ともにLDQのスコアが治療後に減少したが、鍼治療の方がより有意にスコアが減少した。
→鍼治療、薬物療法ともにディスペプシア症状が改善したが、薬物療法よりも鍼治療の方がより改善した。
鍼治療、薬物療法ともにFDDQLのスコアが治療後に増加したが、鍼治療の方がより有意にスコアが増加した。
→鍼治療、薬物療法ともにQOLが改善したが、薬物療法よりも鍼治療の方がより改善した。
血漿グレリンとGLP-1濃度は、鍼治療後、薬物療法後に増加したが、CGRP濃度は減少した。
有効率は、鍼治療グループが90.63%(29/32例)、薬物療法グループが 68.75%(22/32例)で鍼治療の方が高かった。
【結論】
鍼治療は機能性ディスペプシアの症状を改善させた。その効果は、グレリンやGLP-1などの消化管ホルモン分泌の促進によるものと考えられる。
食後愁訴症候群に対する鍼治療の効果
【対象】
ローマⅣ診断基準の食後愁訴症候群の基準を満たした18〜65歳で、1年以内に胃内視鏡を受け正常であった患者278名
【方法】
鍼治療グループ(117名):20分間の鍼治療(ツボ9カ所に鍼を刺入)を計12回(3回/週で4週間)
偽鍼治療グループ(112名):ツボでない場所の皮膚表層(2〜3mm)に鍼を刺入
【結果】
鍼治療後に、「とても改善」、「改善」と答えた患者の割合が、鍼治療グループは83%、偽鍼治療グループは51.6%と鍼治療グループのほうが有意に高かった。
主要な3症状(食後の膨満感、上腹部の膨満感、早期飽満感)がすべて改善した患者の割合が、鍼治療グループは27.8%、偽鍼治療グループは17.3%と鍼治療グループのほうが高かった。
ディスペプシアの症状(食後の膨満感、早期飽満感、上腹部の膨満感、げっぷ)とQOLが鍼治療によって改善した。
鍼治療の効果は12週間継続した。